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唐突な切り返しに、ひろ子は戸惑った。
自分の成長した所など、考えた事もない。
「どこって……え、と……あ……」
「ん?」
ぶっきらぼうに答えを促す要を前に、数秒それを模索していると、不意に気怠そうな声が割り込む。
「だ~畜生。
ウチが拾いに行くハメになる事まで想定してなかったクソ……。
どーせならルイぶん投げりゃ良かったか……?」
「!」
なんだか物騒な事を呟きながら、ナルクヮが戻ってきて、ひろ子の足元から、先程の上履きを引ったくる。
そして、体を起こしながら、溜め息混じりにひろ子に告げる。
「てめぇ、ちんたらやってっと置いて帰るからな。
それと、発音間違えるならハナから呼ぶな。
ぶっ殺すぞ。
じゃな要~……」
言いながら大欠伸し、ナルクヮは踵を返した。
「あ、ちょっと待ってよ~!」
ひろ子は、要そっちのけで、ナルクヮを追って行ってしまった。
その後ろ姿を見詰める要の脳裏に、久しく眠っていた記憶が蘇る。
同じ幼稚園、同じ小学校に通っていたひろ子。
なんだかんだいつも一緒に居た気がする。
“大きくなったら要ちゃんの奥さんになる!”
なんて言われて、照れた頃もあったっけ……。
「……外見ばっかり大人っぽくなりやがってよ……」
ぽつりと呟き、溜め息を付くと、不思議と笑みがこぼれた。
その時、要が薄々していた嫌な予感が的中してしまった。
「いいねぇ~要く~ん。
青春だねぇ……」
やっぱり出やがったこの野郎。
「一矢……」
にやけ笑い全開で近寄ってくる一矢に、要は青筋を立てる。
「外見ばっかり、大人っぽくなりやがってよ……」
一矢が要の隣に立ち、先程の再現を演じた、その直後。
「っ!!?
いってぇっ!!!」
要は、全力で一矢の足を踏みつけた。
「……けど、何でフルネームで名前呼んじゃ駄目なの?」
夕陽が照らす帰り道で、ひろ子が、隣を歩くナルクヮに徐に問う。
そのもう一つ向こうでは、ルイと沙耶が、昼間の改造一矢が、あのまま元に戻らなかったらどうなって居たかを想像し、盛り上がって居る。
ナルクヮが堂々と紫煙をくゆらせていることに、誰も突っ込む気配が無いので、ひろ子も触れない事にした。
彼女は大きく煙を吐き出した後、答える。
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