三話目

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 唐突な切り返しに、ひろ子は戸惑った。  自分の成長した所など、考えた事もない。 「どこって……え、と……あ……」 「ん?」  ぶっきらぼうに答えを促す要を前に、数秒それを模索していると、不意に気怠そうな声が割り込む。 「だ~畜生。  ウチが拾いに行くハメになる事まで想定してなかったクソ……。  どーせならルイぶん投げりゃ良かったか……?」 「!」  なんだか物騒な事を呟きながら、ナルクヮが戻ってきて、ひろ子の足元から、先程の上履きを引ったくる。  そして、体を起こしながら、溜め息混じりにひろ子に告げる。 「てめぇ、ちんたらやってっと置いて帰るからな。  それと、発音間違えるならハナから呼ぶな。  ぶっ殺すぞ。  じゃな要~……」  言いながら大欠伸し、ナルクヮは踵を返した。 「あ、ちょっと待ってよ~!」  ひろ子は、要そっちのけで、ナルクヮを追って行ってしまった。  その後ろ姿を見詰める要の脳裏に、久しく眠っていた記憶が蘇る。  同じ幼稚園、同じ小学校に通っていたひろ子。  なんだかんだいつも一緒に居た気がする。 “大きくなったら要ちゃんの奥さんになる!”  なんて言われて、照れた頃もあったっけ……。 「……外見ばっかり大人っぽくなりやがってよ……」  ぽつりと呟き、溜め息を付くと、不思議と笑みがこぼれた。  その時、要が薄々していた嫌な予感が的中してしまった。 「いいねぇ~要く~ん。  青春だねぇ……」  やっぱり出やがったこの野郎。 「一矢……」  にやけ笑い全開で近寄ってくる一矢に、要は青筋を立てる。 「外見ばっかり、大人っぽくなりやがってよ……」  一矢が要の隣に立ち、先程の再現を演じた、その直後。 「っ!!?  いってぇっ!!!」  要は、全力で一矢の足を踏みつけた。 「……けど、何でフルネームで名前呼んじゃ駄目なの?」  夕陽が照らす帰り道で、ひろ子が、隣を歩くナルクヮに徐に問う。  そのもう一つ向こうでは、ルイと沙耶が、昼間の改造一矢が、あのまま元に戻らなかったらどうなって居たかを想像し、盛り上がって居る。  ナルクヮが堂々と紫煙をくゆらせていることに、誰も突っ込む気配が無いので、ひろ子も触れない事にした。  彼女は大きく煙を吐き出した後、答える。
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