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ふふふと怪しげな笑みを見せる夏海に、男はまたもやチッと舌打ちを鳴らして、顔だけ横に向け、青年を最大限に睨みつけると
「総司っ!! てめぇはくだらねー嘘付いてんじゃねぇっ!」
怒鳴りつけた。
その大声でビリビリと震える空気をも、ものともせず、ペロリ舌をちらつかせる青年は、大層な器の持ち主に違いない。
「も~土方さんってばすぐ怒るんだから。怒りん坊さんですね?」
ただでさえ男は苛立っているのに、殊更に青年がそんなことを言うものだから、男は夏海の下で暴れ出す。
火に油を注ぐとは、正にこのことである。
「ちょ、暴れんないで下さいよっ……!」
憤慨している男を、夏海が抑えようと気を取られていた。
すると
ガバッ
「隙有り~っ!」
「うわっ!? 何するんですか! 離せっつーの!!」
背後からそーっと近付いていた山崎が、夏海の両脇の下から自分の腕を差し込み、夏海が動けないように固定した。
油断していた夏海はあっさりと山崎の腕に捕まってしまい、ジタバタと暴れる。
「はいはい、大人しくしよな~?」
そんな夏海をものともせずに、笑いながら軽く流し、そのままガッチリ抱え込み座る山崎。
「これも、預かる」
斎藤はすかさず夏海の手に握られた苦無を、取り上げた。
そこで、夏海には抵抗する統べも無く、男は一気に形勢逆転となる。
男は夏海が上から退くと、また深く座り、何を言うわけでも無く、黙ったまま胡座を組んで眉を寄せる。
何処となく緊張感が漂い始めたのだが、それも青年の行動によって、すぐにぶち壊されることとなった。
「…………?」
むにっと急に頬を圧迫された気がして見ると、山崎に抱え込まれた夏海の隣に、いつのまにか色白青年が来て、しゃがみ込んでいた。
「…………」
「…………」
夏海が無言の状態でいると、青年も無言のまま止むことなく、連続的に頬を圧迫し続けて、次には引っ張っている。
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