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「あ~美味かった! 流石総司一押しの店だよな。一君も食えば良かったのに」
藤堂が両腕を頭の後ろに回しながら歩き、満足そうに笑んで、自分より背の高い隣の斎藤を見上げれば、斎藤は眉を潜める。
「見るだけで結構だ。甘味は解せん」
「それさ、総司に言ったら『人生損してますよ』とか言いそうだよな」
「……以前、既に言われた」
その言葉に斎藤がポツリと答えれば、藤堂は吹き出した。
「ぶはっ!! 一君はそれに何て答えたんだよ?」
「甘味は食べるもので無く、見て楽しむものだ、と」
「~ぶっっっ!! 一君! 甘味は食い物だから!!」
「分かっている」
腹を抱えて涙を流しながら大笑いする藤堂と、それに淡々と表情は変わらないままに答える斎藤。
その性格は明らかに真逆のようだ。
見た目も斎藤は髪が漆黒で、瞳は藍色に近い黒。着ている着流しも黒、と冷たいような印象を受ける。
それに対し藤堂は髪は、明るい茶、瞳も明るく赤茶色。と親しみやすい印象だ。
性格も見た目も思いっ切り真逆に見える二人が、何故一緒にいるのだろうか。
この疑問は彼等の事情を知るものしか分からない。
その事情を知る大半の一般市民は、彼等を目にした時、眉を潜め、後ろ指をさし、畏怖の色を見せる。
――彼等、新選組に。
浅葱色を白く山形に染め抜いた、所謂ダンダラ模様の羽織りを身に纏(まと)い、会津潘お抱えの元、京の町を奔走する彼等。
時には人を斬り、血の海を造り、人々を震撼させ、京の町を恐怖に突き落とす。
町の人の認識は『人斬り集団』そんな程度のものだった。
だがしかし、目立つ羽織りを身につけていない今、彼等が新選組の者であると一目見て気が付く者はそうそういない。
それにも関わらず、町を颯爽と闊歩する二人には視線が堪えない。
『ねぇねぇ……あの殿方凛々しくて爽やかだわ』
『私は隣の方の方が可愛らしくて素敵だと思うわ』
……主に町娘の、視線が。
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