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「ん……っ」
頭に妙な違和感を覚え、少女は目を覚ました。再びまどろみを求める瞼を手の甲で擦り、半覚醒の意識を揺り起こす。
ちらりと頭上に目を向ければ、皺だらけで痩せ細った手が頭に乗せられていた。五十をすぎたであろう、長い髭に白いものが混じる初老の男が一人、目の前に立っている。
「おはよう。ようやく目覚めたようだなあ」
男のしわがれた声が耳に張り付いた。
周囲を見回すが、ぼやける視界にうつるのは初めての風景。右にはヒビの入った壺、左には目付きの悪い、口に髑髏をくわえた蛇の銅像。髑髏の暗くくぼんだ眼窩(がんか)で、鈍く光る水晶玉と目が合うと、少女の背中に悪寒が走る。
ここはどこなのだろうか。
「あなた、だれ? あたしは……どうして、ここにいるの?」
室内は灯がついているにも関わらず薄暗い。窓は分厚いカーテンが降ろされ、光は差し込んでこない。
今は昼なのか、それとも夜なのか。
そんなことさえ判断がつかない。
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