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「何を言っておるんだ。ワシはラオベ。この骨董品屋とお前さんの主人だろうが。ここはワシの営む骨董品屋。そして、お前さんはワシの可愛い可愛い人形。三年も眠っていて、そんなことも忘れてしまったのか」
「さんねん?」
意味が分からず眉をひそめ、首をかしげる少女の朽ち葉色の頭を、ラオベは二、三度ぽんぽんと軽く叩いた。
「そうだ。お前さんは体の不具合で、三年もの間ずっと眠り続けていたんだ。そして、今日、やっと目を覚ました」
ラオベは頬を緩ませ、穏やかな笑みを浮かべる。
そうだった、のだろうか?
眼前で笑みを浮かべる男の言葉が腑に落ちず、少女は頭を右に傾けた。
室内灯の下で白い髭がぼんやりと浮かび上がる。
少女は目の前の人物に、全く見覚えがなかった。いや、忘れているだけかもしれない。そう思い、目を瞑って記憶の糸を手繰り寄せようとする。
ふと、少女の耳に優しく穏やかな歌声が蘇ってきた。先程、夢で聴いたあの歌だ。
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