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「とうとう着いたか…」
こぼれそうなため息を我慢し、大きな門を見た。
着きたくなかった……。
変な事に自分を巻き込まれたくなかった。
今から人造人間に頭を下げて仕事を依頼する。
これは警察の面汚しと言える。
何故なら相手はこちらを馬鹿にしているらしいからだ。
我々は何もしない。
したとしてもそれは手遅れだ。
だったら自分達の方が優秀であると思っている、とよく耳にする。
そして市民にもそんな風潮があった。
何かあったらまずは彼らに依頼する。
我々は役立たずの国のお飾りなのだと言われている。
言ってしまえばそうなのかもしれない。
偉い人間は財布の厚さを自慢し、権力という椅子にかじりつき、
それでいて頭を下げるのが上手いのだ。
今の現状がこうだから文句は言えない。
だが本当は本当は自分は違うと。
黒く塗られた古びた門を掴み、つたが絡み合った灰色に薄汚れた屋敷に向かって叫びたかった。
でも言えない、
何故なら自分は一般人だと偽るのだから。
このまま警官だと名乗って、助けて貰って、更に良い顔をさせるのは、馬鹿のする事だ。
わざわざ組織の顔に泥を塗る事もないだろう。
そして、なのにわざわざばれるような行動をする事はないだろう。
カラスが不思議そうに雪野を見た。
本当は違ったが。
雪野にはそんな風に見えたらしい。
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