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仕方なく門から手を離す。
錆び付いたそれは雪野の手のひらを少し赤くした。
「それにしても、どうすばいいのかわからんな」
インターホンは見当たらない。
あったほうがこの洋館には合ってはいない。
でも、これでは呼び出せないから彼は途方にくれた。
まるで玩具を与えられず放置された子供のような気分だ。
だが探求心は芽生えたらしい。
辺りを見回してみると、優しい風がまた木々の葉を揺らす。
それを美しいと感じる余裕さえも出てきた途端、あの花のような薫りに気が付いた。
これは何処から薫るのか、キツくはないそれでいた甘ったるくはない、気分をよくする匂いだった。
見つけたい……。
これはいったいなんの香りなんだ。
心がそれを求め、体は途端にそわそわとしだす。
逆にイラつくそんな気持ちを抑えるが……。
「くそっ」
だが見つけられない。
ザァァ
今まで一番強い風が吹く。
多くの葉が舞い運ばれ、彼の周りでハラハラと踊った。
「……」
あぁ、見つけた
薄茶色の葉が舞う中彼の隣には一人の少女がいた
白い肌に薄いピンクの唇を開き
それに似た桃色のセミロングに切られた髪
そして彼らの特徴の血のように真っ赤な瞳
彼女こそが人造人間
「お前は……っ!」
雪野が先手を切ろうとした矢先、彼女は彼の口に自分の指を突っ込んだ。
「――っ!!」
いきなりの事で雪野は目を丸めたが、彼女はその目をじっと見た。
というよりは、観察をした。
それから、彼の口から自分を解放すると。
目をふせ、小さく、しかし凛としたよく通る声で囁いた。
「……イラッシャイマセ」
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