人造人間

2/9
前へ
/35ページ
次へ
「おしご、と……」 少女は物欲しげな顔で雪野を見上げた。 それはどちらかというとオモチャが投げられるのを待つ犬よりも、 餌をねだり上手に鳴き声をあげる猫の瞳に近かった。 「あぁ、仕事を頼みにきた。その、頼めるか?」 雪野は自然とぎこちなくなった。 まぁそれまでだってそうなのだが。 「……」 少女は首をかしげる。右に、左に……右に…… 首をかしげるのは癖なのだろうか。 「れんちゃに……、きかなきゃ、わかんない」 「いったい、そのれんちゃって何なんだ?」 先ほどから雪野は気になっていたらしいが。 「れんちゃは、れんちゃだよ」 彼女の返事はそんな在り来たりな、面白味もない言葉だった。 「(まぁ、思った通りだな) じゃあ、そのれんちゃに会いたいのだが」 「ん……」 静かに唸ると細い指が雪野を差す。 「俺か?」「……ん」 彼女は違うと言いたげに頭を揺らした。 つまり、後ろと言いたいのだろう、雪野は少し面倒臭くも思えたが、素直に振り返った。 そして、そこに広がる秋の色をした木々を観察する。 なかなかと綺麗じゃないか、 なんて雪野は思ったりしたが、口には出さなかったし、出せなかった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加