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眩しい日の光が薄暗い部屋の中で弾け
彼の閉じた瞼を刺激した。
正直、それは毎日毎日仕事に明け暮れている35歳の彼には辛いものであった事に間違いはない。
しかし、それを拒否し布団を被っても
それでも嫌に脳がシグナルを送ってくる。
"起きろ"っと
彼は仕方なく布団を抜け出し窓を開けた。
辺りには低めの汚いビルと下にはまだ誰もいない静まった市場が広がっている。
風がないその殺伐とした風景は彼の心を晴らす事もなく
ため息という寂しい結果しか残さなかった。
太陽の激しさで彼の瞼はさらにじんじんしてもくる……。
それを擦り大きなあくびをした。
それからずっと擦り続けた。
少し頭の回転が早くなってきたようだ。
それで彼は今日しなきゃいけない事を思い出した。
とても大事な
もしかして自分の人生さえも左右する仕事だった。
彼<雪野正義>は取り敢えず洗面台の鏡に向き合った。
仕事の為にこの小汚ない無精髭をどうにかしないといけないと思ったのだろう。
そしてカミソリを掴んだ彼だったが
この惨めな部屋に少し甘い薫りがするのに気付いた。
身に覚えはない……、
だがどうでもいい。
もともとそういう性格ではないにも関わらず、今日は全てを投げ出したい気分であった。
何故だが今日は自分に何かがふりかかる。
そんな気がする。
そんな時ばかり、
彼の勘はよく当たるのだ。
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