イラッシャイマセ

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人造人間とはなんなのか 正直雪野にその詳しい知識はなかった。 いや……、 この世界の人々の殆んどそうだろう。 なぜなら彼らは極めて少数だから。 雪野が知ってるのも二人だけだ。 いや……、 やはりこの世界の人々もそうだろう。 人造人間という存在はは3年前にいきなり現れた。 そしてこの世界に居座った。 その方法がなんとも不躾で、大統領に直々に願い出たのだ。 官邸に音もなく侵入し、大統領にまず自分達の存在を教えた。 彼らにはなんだか人間には無い能力が有るらしい。 それをあまりよく説明出来ないのは雪野が興味を持てなかったからである。 知らないものは説明出来ない。 仕方ないがそういうものが有るとだけ言っておく。 そして半分大統領を脅し、3つの権利を強奪した。 安全に生きること 住むこと 商売をすること の3つだ。 シンプルなのは関心するが、攘夷論を唱える人間は数知れず。雪野もその考えの持ち主だ。 むしろ彼は人造人間という存在が、胡散臭くてしょうがなかった。 サーカスから逃げ出したピエロの類いだと信じきっている。 だから彼は行きたくないのだ。 今、人造人間は街の外れの森の奥に住んでいる。 そしてそこへの地図が彼の胸ポケットに入っているのだ いつの間にか人混みに弾かれた彼の目の前に、あのピンクが現れた。 『何でも屋』 ――奇怪な事件待ってます―― 街外れの森の洋館の住人より 追伸、料金は激安です。 以上 それに雪野は一通り目を通すと 壁からひっぺがし、ぐちゃぐちゃにして捨てた。 しかしそれはまるで顔を歪めて、自分を嘲笑っているようで、雪野も苦い顔をした。
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