記憶の一端

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でもいまの私には、そのことを手放しには喜べなかったりもした。 ――あれは、記憶なのか。 だけどもし記憶だとして、どうして今になって蘇るのだろうか? いや、そもそも記憶を無くした者がそれを取り戻すためには、その人なりの刺激が必要となるはず。 確かに療養も必要だけど、じっと寝ているだけで戻るはずがない。 それほど甘くはないとは思う。多分だけど……。 あの爆発が原因でなったわけじゃないことは明確。 だってあんなことは、今では頻度もグンと少なくなったけど、日常茶飯事となっていたから。 となると、やっぱり―― ** 「……許さない」 ** 「っ……!!」 思い出すだけで、またゾクリとする。頭も痛くなってきた。 気分も悪くなってきて、吐きそうになる衝動を抑える。 「リルさん? 大丈夫? 気分でも悪いの?」 スノウくんが気付いて声をかけてくれたけど、正直返す気力もない。 だからといって無視するわけにもいかないので、首を横に降る。 お姉様も、スノウくんに続いて声をかけてくれた。 けど、心配させてまた迷惑をかけさせるわけにはいかないのだ。 私はただでさえ、この学校にきてお姉様の叱咤(しった)を数回、受けているのだから――。 ――なので同じく、首を横に振ったのだった。
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