記憶の一端

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『!!?』 反射的に振り返るとそこにいたのは、私のよく知った姿。 私とは正反対に、短く肩までしかない髪を揺らし走ってきたその人は、思い切り飛びついてきた。 スノウくんをスルーして。 「お姉様っ……!!」 少しよろけたけど、抱き留めることはできた。 「あああ~~!!! やっと見つけたー、いたー……!!」 ぎゅううっと、きつく私の腰を両腕で締める。 痛い。 痛いですよ、お姉様。 お姉様は多分だけど、加減はそこまでしていないと思う。 だから私でも、痛い。 多分スノウくんたちにやったら、骨が一・二本くらい折れちゃうかも……。 ――けど、同時に嬉しいとも感じた。 その縋(すが)り付くような姿は、子供そのもの。 もっと言えば、イーシェスさんよりもだ。 イーシェスさんに失礼なのはわかりきっているけど、そう思わずにはいられなかった。 それほど、そのときのお姉様は私達よりも幼く見えたのだ――。 私は、まるでお姉様が甘えてくれているみたいな。 そんな気がしたんだ。
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