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次の日の朝、私は異動通知を眺めたけど……
やっぱり判を押せなかった。
責任が重すぎる。
私は鞄に異動通知を押し込んで出勤した。
6階のロビーでコーヒーを買ってデスクに向かうと、
『優奈ちゃん。おはよう♪異動通知に判押したの~?』
と嬉しそうに佐藤さんが話しかけてきた。
『おはようございます。なんかやり遂げられるか不安で……』
と私が言うと
『優奈ちゃんなら出来ると思うけど。夢だったんだから挑戦してみなきゃ始まらないよ。』
と背中をポンポンと叩かれる。
それでも何か引っ掛かりが取れないような状態のまま退社の時間になってしまった。
私は帰り際に3階のファッション雑誌の部署でエレベーターをおりてみた。
マネキンが何体もあって、色んな服を着させられていた。
服も何着もロビーにはみ出して置かれている。
それを見ると自分の夢が込み上げてきた。
『あれ?何か用があるの??』
スタイル抜群の綺麗な人に話かけられた。
『あの……来週から異動になるかもしれない、優奈と申します。』
私は一応挨拶をした。
『あっ。THSKの担当をお願いしてる子ね。』
とウィンクをしながら笑いかけてくれた。
『はい。私に出来るか悩んでて、活気をもらいに来ました。』
と元気に礼をして答えた。
『あなたなら大丈夫な気がする。待ってるよ。』
と忙しそうに駆けて行った人にまた礼をしてエレベーターに乗り込んだ。
私になら出来るかもしれない。やらないうちから悩んだって仕方がない。
私は、もう一度6階に戻ると異動通知に判を押して編集長のデスクに置いた後スキップするようなリズムで家まで帰った。
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