第1章 第3節

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「…ハァ…ハァ…。」 久しぶりにあの事故の夢を見た。 「…大丈夫?」 咲の声。…確かに…ここにいる。 「大丈夫だよ。…怖かったね。」 「うん。…そうだね。」 彼女の音はその時、とても熱く、速かった。 僕らはいつまでも一緒だと強く感じた。 予想以上に汗をかいてしまったので、シャワーで汗を流した。 「今日はどうしようか?」 咲がシャワーあがりの僕に声をかける。 そういえば、今週は休日に何をするかを決めていなかった。 「そうだな…。」 ピンポーン。 僕の思考はインターフォンの音で中断された。 「はーい。」 玄関を開けると私服姿の愛が不機嫌そうに立っていたかと思うといきなり顔を真っ赤にして騒ぎ出した。 「…なっ!何で上着てないのよ!」 …あ…。忘れてた…。 「この変態!痴漢!肉体ナルシスト!」 最後の何だ? 「あぁ、わかった。着るから騒ぐな。ご近所に通報される。」 僕は渋々服を取りに行った。 …本当に通報されてないだろうな…。 「で?どうしたの?」 服を着て戻ってきたら、愛は堂々とリビングに上がり込んでいた。 …断りなしかよ…。 「相変わらず、散らかってないわね。」 愛が辺りを見回していった。…なんか嫌そうな言い方だな…。 「質問に答えろ。」 「いやね?…散らかってたら掃除するつもりだったんだけど…」 冗談じゃない。僕は一年前、お前が大惨事を起こしてからこまめに掃除をしてるんだ。 「んー、じゃあご飯作る!」 「…帰れ!」 ほんとに冗談じゃない。…お前に家事なんかやらせるもんか! 僕は忘れない。…一年前のあの日を…。
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