第1章 第3節

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8月10日 「ねぇ、礼。」 「何?」 その日、僕達兄妹はフローリングの床に突っ伏していた。 「床、あったまってきた。」 「我慢しなさい。」 …エアコンが壊れたからだ。 「…礼、なおしてよ…。」 「無茶言うな。」 さっきからずっとこのやりとりを続いている。 この猛暑の中、何か行動するだけの根性が僕達には無かった。…嫌な所が似たもんだ。 「…お兄ちゃんでしょ~。」 「じゃあ、弟でいい。」 ピンポーン。 その日もこんな下らない会話をインターフォンがかき消した。 「礼、出てよ。」 「嫌だ。咲行きなよ。」 ピンポーン。 「お兄ちゃんでしょ。」 「じゃ、お兄ちゃん命令。」 ピンポーン。ピンポーン。 「可愛い妹に慈悲深くいなさいよ。」 「残念だが、僕の方が可愛い。」 ガチャ! 「ここで行ってくれたら、可愛い女の子紹介するよ~。」 「せんでも僕はモテモテだ。」 ドタドタドタドタ! 「へぇ。どのくらい?」 「学校の美女は全員僕に夢中だ。」 「…自惚れんな。」 ザバァァ! 頭の上からいきなり冷水をかけられた。 「冷たっ!?」 体を起こして見上げるとスゴい形相の愛が見下ろしていた。 「…いつまで寝てんのよ。二人して。」 「エアコンが壊れたんだよ。」 仕方なく体を起こして、対応した。 正直、これをするのもかなりダルい。 「業者は?」 「3時位にしか来れないって~。」 次は寝たままの咲が答えた。 「…じゃ、丁度良かったじゃない。お姉ちゃんが一緒に家でご飯食べようって。」 「マジで!行く!行く!」 即座に反応した僕に対し、咲は寝たままの「え~、移動ダルい~。」と唸っていた。 もちろん、咲が愛に冷水かけを喰らったのは言うまでもない。
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