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8月10日
「ねぇ、礼。」
「何?」
その日、僕達兄妹はフローリングの床に突っ伏していた。
「床、あったまってきた。」
「我慢しなさい。」
…エアコンが壊れたからだ。
「…礼、なおしてよ…。」
「無茶言うな。」
さっきからずっとこのやりとりを続いている。
この猛暑の中、何か行動するだけの根性が僕達には無かった。…嫌な所が似たもんだ。
「…お兄ちゃんでしょ~。」
「じゃあ、弟でいい。」
ピンポーン。
その日もこんな下らない会話をインターフォンがかき消した。
「礼、出てよ。」
「嫌だ。咲行きなよ。」
ピンポーン。
「お兄ちゃんでしょ。」
「じゃ、お兄ちゃん命令。」
ピンポーン。ピンポーン。
「可愛い妹に慈悲深くいなさいよ。」
「残念だが、僕の方が可愛い。」
ガチャ!
「ここで行ってくれたら、可愛い女の子紹介するよ~。」
「せんでも僕はモテモテだ。」
ドタドタドタドタ!
「へぇ。どのくらい?」
「学校の美女は全員僕に夢中だ。」
「…自惚れんな。」
ザバァァ!
頭の上からいきなり冷水をかけられた。
「冷たっ!?」
体を起こして見上げるとスゴい形相の愛が見下ろしていた。
「…いつまで寝てんのよ。二人して。」
「エアコンが壊れたんだよ。」
仕方なく体を起こして、対応した。
正直、これをするのもかなりダルい。
「業者は?」
「3時位にしか来れないって~。」
次は寝たままの咲が答えた。
「…じゃ、丁度良かったじゃない。お姉ちゃんが一緒に家でご飯食べようって。」
「マジで!行く!行く!」
即座に反応した僕に対し、咲は寝たままの「え~、移動ダルい~。」と唸っていた。
もちろん、咲が愛に冷水かけを喰らったのは言うまでもない。
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