第1章 第3節

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自宅でシャワーを浴びて本庄家に行くとエプロン姿の聖さんが出迎えてくれた。 「いらっしゃ~い。礼ちゃん、咲ちゃん。」 「今日はありがとうございます。聖さん。助かりました。」 「ありがと。聖姉。」 昔は僕も『聖姉』と呼んでいたのだが、いつの間にかそう呼ぶのが恥ずかしくなって、『聖さん』と呼ぶようになった。 これが男女の意識の違いってヤツなんだろう。 そういえば、咲も愛も昔は僕のこと『お兄ちゃん』って、呼んでたっけ。いつの間にかなくなったけど。 リビングに入ると涼しい風が僕達を包み込んだ。 しばらくして、愛がいないことに気づく。 「愛は?」 「今、キッチンで何か作ってるよ。」 僕の質問に聖さんが続く。 「…あいつ、料理出来んの?」 「さぁ~。」 おいおい、大丈夫なのか? 少し心配になって、キッチンへと向かった… …時にはもう遅かった。 その状景を言葉にするには僕の中の国語辞典では不足だった。 ただ、あえて一言で言うなら… 「…地獄だ。」 後にこの事件は『本庄家炎上未遂事件』として、ご近所で話題になった。 他にも愛は『大掃除内壁破損事件』など他多数、似たような伝説を残していた。 故に、僕達兄妹と聖さんは怖いほどわかってしまった。 …愛に家事をやらせてはならないと…。
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