第1章 第3節

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結局、この日は愛は僕達の家に居座るつもりらしい。 「今日は陸上部ないのか?」 僕は昼ご飯の食器を洗いながら、リビングにいる愛に話しかけた。 「今日明日は、顧問の先生が出張で部活できないんだって。」 顧問ってそんなんでいいのか? 「代理たてるとかしないか?普通。」 「そうだよね~。普通。」 洗い物が終わり、リビングに戻ると愛はソファで寝っ転がったまま、ぷらぷらと足をばたつかせてアイスをほうばっていた。 ワンピースを着ているため、足が空を切る度に白い太ももの中腹ぐらいまであらわになる。 愛は聖さんほどではないものの、スタイルはいい。 スポーツ部特有のしまった体つきは聖さんも憧れていた。 …なんて無防備なんだ。 …食べてるアイスキャンデーに何となく目がいってしまう。 「…僕も汚れたな…。」 しみじみと思いながら、冷凍庫からもう一本取り出した。 ストックがもう無いな。…買っておくか。 夕方になると、聖さんが迎えに来た。 「ごめんね~。家族全員外出しちゃて、家に誰も居なくてさ。」 そういうことだったのか。やっと納得できた。 「…でも、せめて連絡してくださいよ。」 聖さんにリビングにあがってもらって、紅茶を飲みながら、話していた。 ちなみに、愛はいつの間にか僕のベッドで爆睡していた。 「アイツどうします?あのままにしときますか?」 まぁ、じきに目を覚まして帰っていくだろう。 それよりも愛は無理やり起こすと被害を被ることがある。…寝起きがかなり悪いのだ。 「う~ん。…踵落としだもんねぇ。」 聖さんが苦笑いをしながら同情してくれた。 そう。昔、僕は寝起きに愛の踵落としを喰らって顔にでかいアザができたことがあった。 「…じゃあ、置いていこうかな。」 そう言うと、聖さんは残っていた紅茶を飲み干して席を立った。 玄関まで見送ると、ニンマリとした顔でこちらを振り返り、僕の顔を覗き込んだ。 「…襲っちゃ駄目だぞっ。」 それだけいって、彼女は向かいの自宅へと走っていった。 「…無い。無い。」 僕は1人で呟いてティーセットを洗い始めた。 その時は、自然に笑顔になれていた気がする。
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