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それから愛が目を覚ましたのは4時間ほど後のことだった。
「…おはようございまふぅ~。」
「もう8時だぞ。さっさと帰れ。」
「ふぇ?……ふぁ。」
どうやら僕の言葉を聞くまで自分がどこに居たのかわかっていなかったらしい。
彼女は自分の居場所を確認すると、顔を真っ赤に染め、崩れたワンピースを直して、そそくさと玄関から出て行った。
まったく、礼ぐらいいってけよ。
そんな事を思いながらも、つい笑ってしまう。
ここ数日、あまり落ち着いて休みを取れなかった。
多分、自分自身のせいで。
今日もゆっくりできた訳じゃ無かったけど…。
「…悪くなかったかな。」
小さく呟いた。
こんな休日も悪くない。きっと、咲もそう思ったのだろう。
今日の彼女はとても静かだった。
そんな思いに浸っていると、携帯がせわしく鳴り始めた。
愛からの電話だった。
『もしもし?』
「…どうしだの?」
『…や、お礼…言ってないから…。』
意外だった。そんな細かいことは愛は気にしないとおもっていた。
『…お姉ちゃんがお礼しなさいって…。』
あぁ、そういうことか。
「気にするなよ。今更だろ?」
『…あ、うん…。』
何だろう?なんだか話しにくい。…なんというか…
「…愛らしくない。」
『…へっ?!』
いつもなら、どかどかと話してくる愛なのに、今はまるで別人のようだった。
僕に寝起きを見られたことを気にしているのだろうか?
「…なんかあったのか?」
『…いやっ、…別に…。』
そんなやりとりを続いていると後ろから『…あぁ!もう!』という声が聞こえた。…聖さんだろうか?
『…もしもし?礼ちゃん?』
いきなり、聖さんが電話を代わった。…かなり勢いがある。代わる寸前に『…あ、お姉ちゃん!?』という愛の声がした気がしたがスルーしておこう。
「…はい。」
あんまりいつもの聖さんから想像のつかないほどの勢いなので圧倒されてしまった。
ほんとに今日の本庄姉妹はどうしたんだ?…本気で心配になってきた。
『明日!中条駅改札!朝10時!おめかし必須!お金たんまり持って集合!以上!…ブツン。』
返事する間もなく電話を切られた。
意味がわからなかった。
「…脅迫?」
ポカンとしている僕に対して、咲は微笑んでいた。
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