第1章 第4節

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それから二分としない内に礼の姿が見えた。 少しいつもの服とは違って、引き締まった服を着ている。 スーツほど堅苦しい物でもなく、例えるならバーのマスターのような感じだろうか? 礼の高くて細い体つきによくマッチしていた。 「…すまん、待ったか?」 すでに目の前まで来ていた礼の言葉で私は我にかえった。 「…えっ!?…あ、うん。」 我ながら情けない返事をしてしまった。…完全に妄想の世界にフェードアウトしていたなんて、死んでも言えない。 「…?聖さんは?」 礼が辺りを見回して言う。 そうか。お姉ちゃんは呼び出すだけ呼び出して、電話を切っちゃったんだ。 「…えっと、今日お姉ちゃんは…」 お姉ちゃんも居ると思っておしゃれして来たのかな…最初から私1人だって知ってたらどうしたんだろう。 「…風邪か?」 「…うん。」 だけど、次の言葉を聞いたとき、そんな不安はなぎ払われた。 「…聖さんには悪いけど、少し助かったかな…。」 と、小さな声で礼が呟いていた。 …え?…うそ…。 私と2人きりってことに少なからず喜んでくれてる? その時、私はどんな顔をしていただろうか? その瞬間から心臓の高鳴りは激しくなり、そのせいか体全体が熱くなっていく…。 「…!どうした!?顔真っ赤だぞ!」 私の変化に気づいた礼がびっくりしながら話しかけてきた。 どうやら、さっきの独り言を聞かれたとは気づいていないらしい。 「…ななな何でも…無いデス!…ハイ!」 興奮と緊張からつい声がうわずってしまい、片言のようになってしまった。 こんな事で、今日1日大丈夫なのだろうか? 体はあついし、心臓が絶えず自己主張を止めようとしない。 「…で、どこ行くんだ?」 話が途切れたのを見計らって、礼が尋ねてきた。 「…あ、うん。…えっと…。」 お姉ちゃんが考えてくれたデートプランの書かれたメモを取り出す。 「まず、美津地まで行って、それから映画館…。」 …そこで恋愛映画を観る…そのあと、ご飯。 突っ込みどころの無いベタな予定表だ。…なんともお姉ちゃんらしい。 「…んじゃ、まず電車に乗るか。」 そういって歩き出した礼について行くような形で私は駅に入った。
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