第1章 第2節

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「幸せな恋をして欲しい。」 「…。」 「運命的な出会いをして、立ちはだかる問題を二人で協力して解決して、幸せになって欲しい。」 「…。」 …カリカリ。 放課後の生徒会室。静かな校舎内とは対象的に騒がしい。 …といっても、二人しかいないのだが…。 「礼ちゃん。今の詩、凄く良くなかった!?」 それもただ一人、我校の生徒会長、本庄 聖がである。 ちなみに、僕は日々手伝いをしている内に何故だか副会長の位置までのし上げられていた。…生徒会の人間でも無いのに。 「そんな事どうでもいいですから。仕事してください。」 「むー。…乗り悪いなぁ。」 良くてたまるか。仮にも今は文化祭前で、只でさえ、この生徒会は人員不足なのに生徒会長が働かないなんて冗談じゃない。 「仕方ないなぁ。」 そう言うと彼女は書類にペンを走らせ始めた。 「…それだから、未だに彼女居ないんだよね~、君は。」 書類を片付けながら、彼女がつぶやいた。正直、余計なお世話だが、何となく質問してみた。 「…じゃあ、どうすればモテるんですか?」 すると彼女は「ハァ…。」とため息をついた。若干、腹が立った。 「…相変わらず、鈍いねぇ。」 …意味が分からない。 僕が無言になると、彼女は急にバッとペンを走らせていた書類をこちらに向けた。 クラスの出し物の書類だった。紙の隅に何か書いてある。 「…今流行りの『イラックマ』。…上手くない?」 「…仕事しろ。」 一体、何なんだ。この人は。 「ところでさ。礼ちゃんは軽音部出なくて大丈夫なの?」 しばらくの沈黙の後、彼女が尋ねてきた。 「まぁ、誰かとバンド組んでる訳でも無いので。個人的に家で練習してますから。」 「へぇ、またソロでやるんだ!」 またというのも、今年の春祭で僕はソロライブを行った。まだ、右目を失う前の話だけど…。 「今度は、何やるのかな?…ジョン・レノンの『HAPPYXmas』とか?」 実際、何も決まっていない。一団体最大三曲という規定があるので、十八番の『超特急』とあと二曲。一曲は洋楽、あとはオリジナルにしようかな。 「内緒です。」 ともあれ、まだ決まってないので、適当にごまかすことにした。 もう、申請書の提出も近い。早く決めなきゃな。 果たして、僕はまだ弾けるのだろうか。少し不安だった。
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