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「…ハァ…ハァ…。」
負けられない。
「…愛、今のタイム…」
負けたくない。
「…~秒~。」
「…くそっ!」
また、負けた。
あやめちゃんの事があってから一週間が経った。…あれ以来、彼女は学校を休んでいる。
礼に聞いても、なにも答えてくれなかった。
家に行っても門前払いを食らうばかり。
一体あの日、何があったのだろう。
あの血の跡は何だったのだろう。
「…あー!ダメダメダメ!」
考えたってわからないんだ!悩んだってしょうがない。
パンッ!
吹っ切れるために私は顔を両手で叩いた。
「…もう少しやさしく叩けば良かった。」
案外、痛かった。
時間は私に正直だ。
いくら割り切ったふりをしても、ストップウォッチの数字が小さくなることは無かった。
『…君を許さない。』
静かな部屋の中、携帯電話から音が響いている。
『急にあんな事して…を悲しませて…』
少しノイズ混じりに少し高い男の声が流れている。
『早く来なよ…ぐにでも…』
聴きたくない、聴きたくない、聴きたくない!聴きたくない!
『…。』
「もう…許して…。」
精一杯に振り絞った声が人型になった毛布から聞こえる。
しばしの沈黙。
『キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!』
男のものとは思えない笑い声が部屋中に響き渡った。
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