第1章 第2節

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「…ハァ…ハァ…。」 負けられない。 「…愛、今のタイム…」 負けたくない。 「…~秒~。」 「…くそっ!」 また、負けた。 あやめちゃんの事があってから一週間が経った。…あれ以来、彼女は学校を休んでいる。 礼に聞いても、なにも答えてくれなかった。 家に行っても門前払いを食らうばかり。 一体あの日、何があったのだろう。 あの血の跡は何だったのだろう。 「…あー!ダメダメダメ!」 考えたってわからないんだ!悩んだってしょうがない。 パンッ! 吹っ切れるために私は顔を両手で叩いた。 「…もう少しやさしく叩けば良かった。」 案外、痛かった。 時間は私に正直だ。 いくら割り切ったふりをしても、ストップウォッチの数字が小さくなることは無かった。 『…君を許さない。』 静かな部屋の中、携帯電話から音が響いている。 『急にあんな事して…を悲しませて…』 少しノイズ混じりに少し高い男の声が流れている。 『早く来なよ…ぐにでも…』 聴きたくない、聴きたくない、聴きたくない!聴きたくない! 『…。』 「もう…許して…。」 精一杯に振り絞った声が人型になった毛布から聞こえる。 しばしの沈黙。 『キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!』 男のものとは思えない笑い声が部屋中に響き渡った。
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