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…私は今、自らの愚かしさを…激しく悔やんでおります。
どこで綻びが生じ、どこで全てがこんがらがって修復不能になったのか…今さら理解しているんですから。
あの求人広告を見た時は、こういう仕事もいいなと思い…興味本意であった事は認めます。
それから当主様に会って話をし、その朗らかな人柄にすっかり安心してしまった事も…今ではどうしようもない愚行であったと思っています。
だって考えてみれば、女中の経験があるかなど微塵も問われず…その日の内に仕事に就くなんて、おかしいに決まっているんです!
―コツ、コツ…
―その時、ドアの向こう側から微かな足音が響き…それが当主様のものである事は、すぐに分かりました。
私は咄嗟に逃げようとドアへ駆け寄りますが、ドアには硬い施錠がされており…内側から開けるツマミもありません。
更に部屋には私の背後に置かれた粗末なベッドが一台である事を鑑みるに…この部屋がその目的のために存在するのは明らかでした。
「…ああ、神様。アナタというお方は本当に…憎たらしい」
私が届くはずもない不毛な事を呟いている内に、私の眼前で施錠が解除され…当主様が中へ入ってきます。
その瞬間、私は思わずベッドの裏へ隠れようと駆け出しますが…それが如何に無駄な足掻きか。
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