始まり

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この世には、2種類の人間が居る。 男と女とか、子供と大人とか、金持ちと貧乏人とかじゃ勿論なくて、「ルーニェが使える」か、「ルーニェが使えない」かの2種類だ。 ルーニェが何か、なんてことは、生まれたばかりの赤ん坊じゃない限り知っている。 ルーニェは俺たちの生活に欠かせないものだ。 俺たちの生活はルーニェで回ってると言っても、全く過言じゃない。 その大事な大事なルーニェを使える人間は、尊敬と羨望を込めて「ルーニェ使い」と呼ばれる。 ——もしくは、「調理師」と。 ルーニェとは、「火」のことだ。 正確に言えば、火を生み出す石。 それを俺たちはルーニェと呼ぶ。 誰が名付けたかとか、そんなことは知らないし興味もない。 というよりは、考えもしない、というのが正しいかもしれない。 俺が生まれる前から、それどころか母さんが生まれるずっとずっと前から、それはもう「ルーニェ」だった。 だから俺にとってルーニェはルーニェで、その名称にも存在にも疑問を持ったことはなかった。 そして「ルーニェを使える」ということは、この世界で最大のステータスだった。 「いいなー」 「もう一回やって?もう一回!」 俺はいつも仲間と遊んでいる空き地で、いつものようにルーニェを使って見せていた。 基本的に、ルーニェはルーニェ使いじゃない人間から見ればただの綺麗な石た。 俺の手から取ったルーニェを徐々に傾いてきた太陽に透かして、仲間の一人が納得いかない、と呟いた。 「なーんでこんな冷たい石から火が出るのかなあ。どこに隠れてるわけ?」 俺はその問いに、逆に首を傾げる。 「俺にはあったかいけどな?それに、中に火も見えるし」 「えー?」 「うっそだぁ。透明だよだって」 「……ルーニェ使いにしか見えないとか」 「うわ、ずるっ!」 その人がルーニェが使えるかどうかは、生まれた時から決まってる。 男女も貧富も親子の繋がりすら関係なく、使える者は生れ付きルーニェが使える。 地上での息の仕方を教わる人が誰もいないのと同じで、誰に教わるわけでもなく、ルーニェの使い方は知っている。 正に天の采配としかいいようがない。 確率は大体100人に1人、らしい。 これはいつだか学校で習った知識だ。 つまり、ほとんどの人は、ルーニェを使えない。
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