道案内

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「あ、それなら左腕を借りていいですか?」 「あ、はい。」 左腕を相手の右手のすぐ近くに持っていき、相手に握らせた。 小学校の、アイマスクを付けての盲目の擬似体験を思い出した。 あの時は確か、左手にステッキ、右手は友達の手を握っていた気がする。 あの時のように案内すればいいのかな? しかし、それは甘かった。 そもそも、アイマスクを付けた人は、アイマスクを付ける前に、歩く場所を見ている。 しかも、体育館に障害物を置いただけでは、実際の道とはかなり差がある。 それを痛感した。 最初は順調だった。 「どのくらい見えないんですか?」 会話は必要最低限にした。 歩くことから気がそれるといけないから。 でも、これは確認したかった。 見えない度合いによっては、かなり気をつけなきゃいけない。 「あぁ、全く見えないです。」 全盲の人を見たことがないわけじゃない。 小学校によく全盲の人が来て、いろんな話をしてくれたから。 『もしこれから、どこかで全盲の人に出逢ったら、どうか優しく接してあげてください。』 今書いてる途中で思い出しましたが、これはその小学校によく来ていた、全盲の人が最後に言った言葉。
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