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「お父さん」
「…」
「お父さんっ」
「…」
「もうっ!、お父さんってばぁっ!!」
「ん?あっ…」
読みかけの魔法書から目をあげると、机の正面の端に手をかけ伸び上がって見ている娘と目があった。
「ユーリア…」
「お昼っ!」
「あ、もうそんな時間か」
読みかけの頁に栞を挟み魔法書を閉じ立ち上がる。
「本を読んでると、なかなかお返事くれないんだもんっ」
ユーリアが頬を膨らませて怒る。
この集中力の高さが占いの精度をあげ、魔法力の強さに繋がっているのだが、一緒に暮らす者はなかなか返らない反応に苛立つことになる。
「お仕事の邪魔をしようとは思わないけど、食事の時間は守ってちょうだい」
案の定、食堂で待っていたカーユラが硬い表情で言い渡した。
「はい……」
カーユラが怒るのには、ちゃんと理由がある。
元来少食な上に、何かあると食欲に影響する自分の健康管理のために、三食をきちんと摂らせようと努めてくれているのだ。
ところが当の本人が無頓着に食事の時間をすっ飛ばしたり、抜いたりするものだから、カーユラを怒らせてしまう。
こういう時は下手な言い訳などせずに、黙って席に着くに限る。
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