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洗面所で歯を磨き、3分消費。残り5分か、急ぎすぎた。
まぁ今からなら歩いても間に合うよな。走りたくねぇし。
家を出て真っ直ぐに歩き出す。駅までは、ほとんど直進すれば着くため、曲がる地点は2ヶ所しかない。
3本目の交差点を左に曲がり、再び直進。現在約3分経過。
あとはここから2本目の交差点を右に曲がって、真っ直ぐに進むだけだ。
1本目の交差点を渡った辺りで、太った白猫が前を横切った。
「…不幸になるのは黒だよな…?」
迷信だとは思うが、多少は気になるもんだ。にしてもふとましい猫だなぁ…
なんて考えながら歩いていると、2本目の交差点にたどり着いた。
あとは右に進むだけ。と右に方向を変えた時だった。
「ッ!?」
真後ろから大きな衝撃を受け、前方に押し倒された。
ガタァン!!と後ろでも派手な転倒音が聞こえる。痛む背中に嘆きながらも、多分チャリに轢かれたんだな…と原因の推測に考えを走らせる。
痛がっていても仕方がないので起き上がる。
振り返って見てみると、後ろにあるのはやはり自転車。眼鏡をかけた大人しそうな男子が自転車と共に倒れている。
制服が俺と同じだな。あれ?こんな奴いたっけ?あ、学年上か?別のクラスもあるか。つーかいつまで倒れてんだ?
仕方がないので声をかける。
「あのー、大丈夫っすか?」
年上だった場合のために、半敬語で話しかける。まぁ普段からこういう喋り方なのだが。
「…う……すみません…ブレーキが利かなくて……あの、怪我とかしてませんか?」
フラフラと立ち上がりながら言う眼鏡君。
「あぁ、俺なら大丈夫っす。結構丈夫なんで。…あ、制服一緒ってことはも同じ高校っすよね?何年生っすか?」
「えぇ、同じです。僕は1年生ですね。…あなたは?」
自転車を起こしながら眼鏡君が言う。
「俺も1年っす。1年1組の竜成勇騎。よろしく。」
ついでに自己紹介も済ませる。こうすれば大抵は相手も自分から名乗る。
「たつ…なり…ですか?…珍しい名字ですね。自分は1年4組の黒谷秀正です。よろしくお願いします。」
「黒谷もあんま聞かないと思うけどなぁ。まぁいいや。って今何時かわかる?」
俺は時計を身につけないからわからない。
「えーと…8時13分ですね…」
「…電車くるまであと2分だねぇ…」
数秒の沈黙。
「やッべぇぇぇぇ!!黒谷!!急ぐぞ!!」
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