3 恋の自覚

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 しばらくすると、とても中学生とは思えないしっかりとした体格の男の子がコンビニの袋を両手にやって来た。 「待ってたんだよ!!ハムサンド」 苦笑いしながら、佳織ちゃんにハムサンドとイチゴオ・レを渡す。 「普通、先輩にパシリなんかさせないだろ?」 「え?ほら、立ってる者は親でも使えって言うじゃない?先輩立ってたでしょ?」 嫌味すらケロリと交わして、うれしそうにジュースにストローをさす彼女を、太郎くんは軽く睨んでいる。 「ふ~ん、そう出るんだ?せっかくコンビニで隆史に会った事教えてやろうと思ってたのに」 淡々としていた彼女が、また真っ赤な顔をして太郎くんを見上げた。 「え?どんな服装してた?今日もカッコ良かった?」 今までの横柄な態度から一転して、まるで太郎くんにまとわりつく子犬ように、質問攻撃を浴びせている。 「おもしろいくらい隆史って名前に反応するんだぜ。彼女、ベタ惚れ状態」 彼女と太郎くんを見ている私の耳に、直接クスクスと笑いを含んだ遙の声が届いた。  え? 「遙の、彼女じゃ、ない、の?」 「はぁ?」 遙は片方の眉毛だけを器用に浮かせて、すっごく驚いた顔をして私を見つめ返す。 「いや、だからキスマークの相手じゃ、ッゴホ」 ないの? と続けたかったのに、遙の手のひらに口をふさがれてしまった。 「うわ、志緒理何言ってるんだよ?」 慌てた様子で、遙は周囲を見渡した。 つられるように、私も見てみると、他の三人はそれぞれに笑いながら、コチラに注目している。 「遙ぁ、お前誰とヤッたんだよ?」 太郎くんは遙の首を絞めるようにしながら、遙を見下ろすように、問いただす。 え? ケンカ? でも、残りの二人はそのやり取りを、笑いながら見守っている。 ただのじゃれ合いって事? 「いや、、別に。」 「吐け!吐くんだ!誰とヤッた?」 太郎くんの腕から逃れるように、身をよじる遙。 「鈴子でしょ?教室で自慢気に喋ってたみたいだったもん」 その場に、佳織ちゃんの声が響いた。  スズコ? 始めて耳にするその名前が、遙の彼女? 「遙先輩にしては、人選ミスだよねぇ。 いくら溜まってるからって、口も身持ちも軽い女なんて」 太 郎くんはそんな佳織ちゃんの言葉に耳を傾けながら、遙をジッと見つめている。 「マジ?」
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