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ガチャリと玄関の閉まる音が聞こえて、まるで取り残されたように静かになった遙の部屋。
「………大きな声だして、悪かったな」
ため息をつくように大きく息を吐いて、遙はベッドに腰かけた。
もう、怒ってない?
恐る恐る遙を見ると、そこには怒りの色はなく、長いまつげの影を落としながら俯いている。
「………」
さっきから、動けずに立ちつくす私を隣に手招きする。
まるで催眠術にかけらたみたいに、言われるままに身体が動く。
「志緒理…」
遙の目に、私が映っている。
きっと、私の目にも遙が写っている。
「オレには、彼女なんていないよ。
すごく、好きな女ならいるけど…」
真剣に、まるで言葉を選んでいるかのようにゆっくりと、遙が話し出す。
好きな女?
「ずっと、ずっと好きで。
オレだけのモノにしたいのに、全然オレに感心がなくて、他の男の話を平気でするような女だけど…、それでも好きなんだ」
……………ソレって?
「昨日だって、酔ってたのか知らないけど楽しそうに新しい男と番号交換とかしてたんだけど、オレはソイツが好きなんだ」
………え?
「志緒理が、好きだ。
もうずっと………」
「…嘘?だって、え?」
遙が私を好き?
そんな事が、ホントに?
うれしさのあまり、頭の整理がつかない。
あれ?
パニックになっている私に、目をまぶしそうに細めながらうなずく遙。
「滝川遙(たきがわはるか)は、水無月志緒理(みなづきしおり)を愛してます」
はっきりと宣言するように、遙らしい告白。
うれしい!
遙が、私を好きだなんて!!
「私も!私も遙が好き」
遙と会えない一日がどれだけ長かったか、どれだけ淋しかったか………。
私には、遙がいないと生きていけない。
うれしくて、うれしくて、涙があふれそうになるのを必死でこらえた。
「ホントに?」
優しく聞き返しながら、遙の顔が傾きながら近づいて来る。
「…うん」
私の頬を優しくつかみながら、唇を開かせて、遙の暖かい唇が私の唇と重なった。
ファーストキス。
遙とキスしてる。
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