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「理由はわかったけど…世の中そんなに甘くないんだよ」
キツイ一言が俺をグサッと突き刺した
『甘い考えだと言う事は十分わかってます』
「わかってないよ。それより早く本当の家に帰った方がいいと思うよ…きっと今頃家族の方が君を心配して」
『俺、家族なんていませんから』
「……」
一気に悪い空気になってしまった
だって本当に家族なんかいねーし…
それに俺を心配する奴だって…いない
一瞬だけアイツが俺の頭を過ぎった
けど、俺は自分でそれを気のせいだと無理矢理頭の中で揉み消したんだ
「…悪いけどいい返事が出来そうにない。他を当たって…」
『お願いします!!俺を雇って下さい!…何でもしますから!』
俺は頭を深く下げ必死にお願いした
また他を探すのが正直面倒臭いから
それにさっき面接した時色々教えてくれたんだけどここの居酒屋はなかなか時給もいい…
実際にやってみないとわからないけど仕事内容も何となくならわかるような気がする
それに、これは本当に何となくだけどこの店長さんは…色々話しやすい
「いや~…でもなぁ…」
『お願いします!!』
「うーん…」
『マジで体力には自信があります!!一生懸命頑張りますっ!俺をここで働かせて下さい!!』
「ち、ちょっ…落ち着け!」
『あ…』
俺は無意識に店長さんに詰め寄っていた
いかんいかん…押しすぎは良くない
『…すいません』
「いや…別にいいけど……そんなにここで働きたいのか?」
『勿論です!』
目をこれ以上にないぐらいギラつかせ俺は真剣に店長さんと視線を合わせた
「………」
『……………』
ここで視線を外したら俺の負けだ…
「………わかったよ。君の押しに負けた!それにさっき嘘を言ってるようにも見えなかったし……
で、いつから働ける?」
おおっ!!
『有り難うございます!!いつからでも大丈夫です!!』
「じゃあ今日からとかでも大丈夫?実は今日一人バイトが休んだから人が足りてないんだよ」
『今日からでも大丈夫!!何なら今直ぐにでもッ』
「今直ぐって…本当に急いで仕事探してたんだ」
『あは…は』
苦笑いで俺に笑い掛けてくれる店長さんが押しに弱くて助かった…
ってかまた何となくだけどこの店長さん…尾澤さんと同じで天然っぽいかも
居酒屋の店長は皆天然なのか?
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