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  そこで意識を呼び戻した。 また悪い方に考えてしまったな。 こういうニュースを見る度に意識を囚われてしまう。 点けたばかりのテレビを切り、気持ちを切り替え台所に向かい、青錆びた水道から流れ出る水で顔を洗った。 さあ、仕事だ。 油で汚れた作業着に身を通し気持ちを整える。 オレの住まいは築30年以上にもなる木造アパート。 家賃は毎月の給料から引くという約束で工場のオーナーが保証人になってくれた。 子供の頃から古い長屋暮らしだったためか、オレはこの古い和風の造りに愛着すら感じる。 畳も敷布団も好きだ。 トイレだって便座は和式の方が慣れている。 食の嗜好も味噌や醤油を使った濃い味付けのものが好き。 名古屋名物の味噌カツを初めて食べた時には、あまりの美味さに感動したくらいだ。 身支度を終えたオレはタオルを首に巻き付け、アパートを出て10分とかからない職場へと向かった。
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