13/28
前へ
/272ページ
次へ
少し気を良くしオーナーの元へ向かい帰りの報告をする。 「終わりました。お先に失礼します。お疲れ様でした」 オーナーは自分の手元の機械に視線をやったまま軽く頷いた。 背中を向け出口に向かおうとすると機械の音が止まった。 「根中」 根中一一オレの名前だ。 振り返ってオーナーと向き合う。 「はい」 「この仕事はどうだ」 オーナーがオレに質問をした。 珍し過ぎて驚いてしまう。 「えっ、この仕事ですか……なんて言うか、その、僕にはとても有り難いです」 「そうか。明日も頼むぞ」 「は、はい……」 そうしてオーナーは再び自分の手元に視線を落とす。 何だったんだろう。気になって仕方がない。 「何か……あったんですか」 その質問にオーナーは首を一度だけ横に振って応えた。 それだけで収まりが着かないオレは咄嗟に口を開いていた。 「もう僕を使う必要がなくなったとかじゃ」
/272ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1171人が本棚に入れています
本棚に追加