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オーナーが初めてしてくれた身の上話しにたまらなく嬉しくなる。
「そうなんですか!すごい!」
「大したことはない」
もっと話していたい。
「段とか帯とかそういうのってあるんですか!」
「3段。黒帯だ」
オーナーと会話ができている。話しを途切れさせちゃ駄目だ。
「えっと……えっと、何かその武道の教えみたいなものって何かあるんですか」
「ああ。残心というものがある」
「ざん……しん?」
「心を残すという意味だ」
「例えばどういう……」
「武道は礼に始まり礼に終わる。どんなに痛くても相手に礼を終えるまでは痛がった顔を相手に見せるな。最後まで心を残しておけ。例えるならそういうことだ」
そこまで喋ったオーナーはそのまま仕事に取り掛かった。
残心、か。
自分の中に留めておこう。
「ありがとうございました!お疲れ様です」
オーナーはいつもと同じ様に目線を合わせず軽く頷いて返してくれた。
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