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自転車に乗って工場を後にする。
沈みかけの太陽にほのかに暖かい風。
古い住宅街を自転車で走り抜けるだけで、こんなにも気持ちが良い。
あの無口なオーナーがオレに身の上話をしてくれた。
金もモノも多くはいらない。
たった少しの時間だったけど、こんな形の人との関わりを望んでいた。
オレは1つだけ冒険をしようと思う。
今なら上手くいくかもしれないんだ。
自転車の進む先をアパートから方向転換する。
ここからだと30分もあれば到着できるだろう。
ケータイを持たないオレは突然の訪問しかできない。
いや、公衆電話を使えば済む話しだが、それ以前に連絡先を知らない。
オレが行ったらどうなるんだろう。
どんな人間になっているかも想像がつかない。
ちゃんと生きているんだろうか。
父さん。
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