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  30分近くかけて着いたそこは、オレの住む街と比べると空き地が少し目立つ。 懐かしいな。 あまり良い思い出はないはずだが、子供の頃に触れ合った記憶に気が緩む。 日は沈み辺りは暗くなったが、その景色はしっかりと思い起こせる。 この木は夏には桃がなる。 ここの側溝でザリガニを飼おうとして失敗した。 ここの家はおばあさんは一人で住んでいる。 中学生になった頃には、ただ通り過ぎるだけの景色になっていったな。 そして4軒続きの古い平屋。 ここがオレの住んでいた家だ。 父さんが家にいる時の半分は酒か覚醒剤にヨレてる状態だった。 部屋の電気は着いていない。 ドアに手をかけるとカギはかかっていなかった。 古い木製の引き戸が音をたてて開かれる。 「こんばんわ」 おかしな気もしたが普通の挨拶をして応答を待った。
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