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返事は返ってこない。 だが靴はあるし生活臭もする。 「こんばんわ!」 家の奥まで通る声で呼んだ。 少しの間をおいて奥の部屋で人が動く気配がする。 やっぱり留守じゃなかった。 どうしよう……顔を合わせてから何を喋ろうか。 扉がゆっくりと開く。 そこから片足を引きずった中年の男が出て来た。 随分変わった。 でも間違いない。 父さんだ。 父さんはのそりのそりと玄関までやってきて電気をつけた。 「やあ……久しぶり……です」 何を言っていいか解らず敬語含みの挨拶をする。 「……宜弘か?」 一一のりひろ。オレの下の名前。見た目以外はオレは日本人なんだ。 「あっ、ああ」 「なんだ?」 この様子だと今はシャブや酒は入っていない様子。 もうやめてくれていれば、それが一番良いんだが、とりあえずは一安心だ。
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