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なら声をあげればいいかと言われればそれも無理だった。女ならまだしも男が男に痴漢されたんですなんて言われたら言われた方もだが言った方も変な目でみられるだろう…
なら黙ったままでいればいいのだろうか…しかしそうすれば痴漢は図に乗って深いとこまで触れてくる。それだけは勘弁だった。
「っ……」
次の駅で降りよう。学園までの目的の駅はあと二回止まらなければいけない。だけどその間までずっとこんな状態で痴漢を受け続けるくらいなら遅刻してでもいいから自分の身を守らなければならない。
よって僕の選択肢は次の駅でおり―――…
「うわっ、やややめてくれ」
「!」
背後から男の悲鳴がきこえる。
「やめて欲しいならその手を放すんだ」
「ははははなしますはなします」
なんだなんだ?一体後ろで何が起きているんだ?
見たいけど怖くてみれない。
だって振り向くという事は僕の尻を触った男をみるという事で…
「……」
なんて小心者なんだ。男ならこんな痴漢くらいでびくびくしてるんじゃない…
だけど男でもやっぱり怖いものは怖いんだ。
ぎゅっと目を瞑る。
「君、大丈夫か?」
「はへ?」
間抜けな声が唇から零れる。情けない……男として情けない。
こんなんじゃ痴漢にあっても文句は言えない。
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