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濃紺の作務衣を着た、なんとも特筆することのない見た目の青年がソコに立っていた。
彼は私に気が付くと会釈をして穏やかな笑みを携えた。
彼の背後に立つ怪物によって振り上げられた斧がその頚を切り落としても。尚、彼は笑みを絶やさない
途端、私は真っ赤になった。頭の天辺から爪先まで真っ赤である。明らかに異常であってもペンキの如く私を真っ赤にしたのは紛れもなく彼の血液である、まるで彼の頚を切り落とした斧の刃のようだと思った。
いつの間にか頚も胴体も斧を振り上げていた怪物もソコにはいない。
数秒して、また青年が姿を現した。
もう幾度繰り返しているのかも忘れてしまった。
私は、結末を知っていて尚逃げることも抗うこともしないその姿をただぼんやりと見つめるしかないのだ
無何有の夢。
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