星に願うは君に幸あれ…

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「まぁどうするかは坂本くんが決めることやけどな。でも…次見つけたら容赦なく俺は土方さんに報告すんで」 山崎は不敵な笑みを浮かべる。 遼は冷や汗が止まらない。 山崎さんは…皆がいないこの時を狙って… 俺に忠告をしたんだ… 一回目は見逃してやる。 だが、次はないぞ…と。 遼は汗をかいた拳をギュッと握り締め、茫然とした表情のまま山崎に告げた。 「…わかりました」 山崎は目を細め頷けば 「わかればええねん。…密通者は間者と変わらんからな。肝に命じときや」 と、言葉とは裏腹に優しく言いその場を去った。 この忠告も山崎の優しさなのだろうか。 しかし遼はもっと考えて行動すべきだったと己を責めた。 遼にとって、龍馬は良き理解者でも新撰組にとっては… なかなか捕らえられない厄介な敵にすぎないのだ。 一緒にいたとこを見られれば、密通者だと疑われても仕方のないことである。 遼は悔しくて泣いた。 龍馬さんは…新撰組は勿体無い人ばかりだと言ってくれた… その新撰組を救えと言ってくれた… なのに… 新撰組は龍馬さんを敵だと言う… 人格なんか見やしない。 邪魔だから、敵だから、排除する。 そんな新撰組を…… 俺はどうやって救えば良いと言うんだろう… 大切な人たちを笑わせることなんて… 俺にできるのか…? ねぇ、龍馬さん 俺…挫けそうだよ… 遼は畳に突っ伏して泣いた。 声を殺し、自分の弱さに無力さに未来への不安に… 泣いていた。 それから泣き疲れて子供のように眠ってしまった。 きっと起きたら目の腫れが凄いことだろう。 静かに遼の側に歩み寄る男がいた。 その男は遼に近付けば自分の着ていた羽織りを遼に被せ、隣に腰をおろした。 「まだ坂本さんは未熟だ。…未熟故に、己の心が揺れる。……だが……」 未熟なままでいて欲しいと願う自分がいる…… その男…斎藤は、優しく遼の髪を撫でた。 「…ん…」 遼が小さく声を出した為、起こしては悪いと思い斎藤は慌てて手を戻した。 「……有り難う、坂本さん。…新撰組に来てくれて…」 斎藤は遼の安らかな寝顔を見つめて呟いた。
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