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それから新撰組隊士らは、各隊に別れ遼の捜索を始めた。
屯所をもぬけの殻にするわけには行かないので、山南、山崎、井上の隊らは屯所に残る事となる。
夜も深い為、長時間に渡る捜索は明日の隊務にも支障をきたすと考えそれぞれの持ち場を振り分け、その持ち場に遼が居なかったら隊長の指示に従い引き上げるという捜索になった。
沖田は捜索に参加できる状態ではないので、一番隊の隊士らには沖田は体調が優れない、とだけ告げ土方が一番隊を率いることにした。
「良いかてめえら!持ち場は隈無く探せ!隊で行動する以上、これも隊務だと思え。あくまでも…遼の捜索が第一だが…怪しい輩が居れば…遠慮なく取っ捕まえろ!」
『はい!!!!!』
その声を合図に、皆京の町へと歩みを進めた。
相変わらず雨が降り続いており、一向に止む気配はない。
生暖かい嫌な空気と大粒の雨が隊士達を包む。
髪も服もその天候のせいですぐにびっしょりと濡れ、重みを含む。
それでも皆、少ない灯りを頼りに目を凝らし遼の姿を捜した。
細く真っ暗な路地も、川が荒れる橋の側も、馴染みの旅籠屋にも声を掛け…。
ひたすらに捜し回った。
雨のせいで皆体力を奪われていく。
じとじとと肌にまとわりつく空気がやたらと邪魔臭い。
いくら捜しても見付からず、もう諦めて引き上げ様かと思った矢先、土方は銭取橋の側に一本の刀を見付けた。
刀が道端に落ちているなど不審に思った土方は、その刀を手に取り調べる様にして見た。
…松守定宗次郎……?
土方は遼がこの刀を持っていることは知らなかったが、宗次郎という刀に彫られた文字を見て嫌な予感が頭を過る。
「まさか…」
土方はそう呟けば荒れ狂う川をじとりと見た。
いや…まだこの刀があいつのもんと決まったわけじゃねぇ。
確か総司が刀を見繕ったはずだ…総司ならこの刀があいつのもんかわかるはず…
土方はそう考えると、隊士らに取り敢えず引き上げるぞ!と早急に声を掛け、刀を腰に差せば屯所に帰る足を早めた。
無事で…
無事でいてくれ…遼
土方は真っ直ぐと前だけを見据え、ただただそう願うことしかできなかった。
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