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土方は自室に戻り、ただ呆然と立ち尽くしていた。
「こんなことって……」
信じられない、そう言いたいのであろう。
土方は沖田から全ての話を聞いた。
遼が未来から来たこと、以前壬生寺でも一度姿を消したこと、今回もおそらく未来へと戻っているのではということ、そして坂本龍馬の生まれ変わりかもしれないこと…。
土方にとっては全て受け入れ難い話だった。
馬鹿にしているのか、とも思った。
だがしかし沖田の目から嘘偽りなどは感じられず、これが真実なのだと突き付けられたのだ。
あいつの髪が茶なのも、剣を全くできなかったのも、おかしな服を着ていたのも、たまに意味のわからない言葉を使うのも…
未来から来たからってことか?
「…ははっ…馬鹿らしい」
土方の呟きが虚しく散る。
「どうしろっていうんだよ……未来にいるんじゃぁ捜すも糞もねぇじゃねえか…」
大きな溜め息と共に吐き出された言葉は、土方の様々な葛藤を含んだものだった。
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遼さん、これで…
これで…良かったですか?
…あなたがいつ戻ってきても大丈夫なように
私は尽力します。
「遼さん…戻って…きますよね?」
沖田は縁側に佇み、雨の降り続く暗雲の空を見上げ呟いた。
「沖田さん…」
名を呼ばれたと思えばほぼ同時に肩をポンと叩かれ、思わず体がビクンと跳ねる。
「あ……斎藤さん」
「体調が…悪いんじゃないのか?平気か?」
沖田は一瞬疑問符が浮かんだが、土方が捜索に出られなかった自分を気遣い、皆には体調不良と伝えてくれたんだろうと察し、慌てて言葉を返した。
「もう大丈夫ですよ!それよりすみません…捜索行けなくて」
斎藤は柔らかく微笑む。
そしてゆっくりと口を開いた。
「坂本さんは…無事だろうか」
「…遼さんは大丈夫です。あの人は死にません…絶対に…」
沖田も嫌な予感は拭えなかったが、きっと未来に戻っているのだろうと信じたかった。
沖田はふと、斎藤も遼が未来から来たと知っているんだったな…と思い、続けて口を開いた。
「あの…私は、遼さんが未来から来たこと知ってるんです。斎藤さんもご存知なんですよね?」
斎藤は目を細め沖田を見れば、ゆっくりと口を開いた。
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