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「…坂本さんは……龍馬さんの魂に呼応し、この時代に来たんだろうか」
「龍馬さんのことも…知ってるんですか?」
沖田は怪訝な目つきで斎藤を見た。
すると斎藤はその鋭い視線に気付いたのか、ハハッと小さく笑い告げた。
「龍馬さんから…聞いたんだよ」
「…え?」
「ちょっと…話す機会があってね」
斎藤は優しく微笑む。
「知り合いだったんですか、龍馬さんと…」
「あの人は…坂本さんと似ている。本当に生まれ変わりなんだろうな…」
質問の答えになっていない斎藤の言葉に、眉をしかめる。
「龍馬さんとはどういった関係なんですか?」
斎藤は珍しくも鋭い視線を沖田に向ければ
「知って…どうするんだい?」
と言った。
「…どうもしませんよ」
斎藤はその言葉を聞けば、フッと笑みを浮かべた。
「ならば…言う必要もないはずだよ」
「そう…ですね」
沖田はそれだけ告げると黙りこんだ。
斎藤もただ静かに空を見上げ、遼のことを思った。
坂本さん…
何をしてるんだ?
まだあなたのやるべきことは在るはず…
この時代でこの場所で…
守りたい人がいるんじゃないのか?
やっと希望の光に出逢えたと思ったのに…
―――――――――
――――――
「くっそー…ッッ!!!!!」
なんでだ!?
なんで戻らねぇんだよ?!
遼はなんとかして幕末に戻れないかと、試行錯誤していた。
もう戻る決心はついているのだ。
なのに何度願っても、幕末へは戻れない。
あの頭痛も来ない。
なんでだ…?
なんで…
俺はまだやり残したことがあるんだ…!!
幕末に戻ってやらなきゃいけないことが…
あるんだ!!
さっき見た夢の約束…
夢の結末
それを見届けなきゃ…
きっと待ってるはずだ…
沖田さんが…
龍馬さんが…
俺を待ってるはずなんだ!!
「…ッッ畜生…!!」
遼は戻れない悔しさに、両手で思い切りベッドを叩いた。
その時、携帯のバイブが鳴った。
「……」
遼はゆっくりと携帯を手に持ち、画面を見た。
着信は彼女のツカサからだ。
「なんだよ…こんな時間に…」
時刻は既に夜中の1時を回っていた。
電話に出ようとボタンを押したその瞬間、視界がグラつく。
ガチャンッ
――もしもし?
――…遼?
あ…戻………れる…?
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