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「坂本くん……」
遼はその声に上を向けば、二人に雨がかからないように頭上に傘をさしてくれている山南がいた。
「…山南さん……すみませんでした…」
山南と沖田を支えると約束をしたその日に、遼は消えた。
遼は山南に対し、どのような顔をすれば良いかわからず俯きながら謝罪した。
「…良いんだ。君にも思う節が色々あったんだろう?」
その声はいつもと変わらず、穏やかだ。
山南は二人にとりあえず屯所へ入ろう、と促し沖田を抱き抱えるようにして立ち上がらせた。
「…坂本くんは……僕と土方くんのところへ行こう」
「有り難うございます…でも…俺、一人で大丈夫です」
遼は強い眼差しで言った。
その眼差しは、もう揺らぐことは無い。
「そうか…」
「山南さんは沖田さんをお願いします…」
山南は小さく頷けば屯所の中へと沖田を連れて入って行く。
すると咄嗟に沖田が口を開いた。
「…遼さん…!!!」
沖田は山南に抱き抱えられたまま遼の方に顔だけ振り向き、何か言いたげな顔をした。
「どうしたの…?」
遼は問い掛けるが、なかなか返事は返ってこず沖田は口をつぐんでいた。
「沖田さん…?」
遼は沖田の方へと近付こうと足を進めようとした、その時沖田はびしょ濡れの顔で静かに告げた。
「土方さんには…全部…全部話しました」
「…ッッ!?」
「約束破って…ごめんなさい。…でも…あなたを救いたかった…もし帰って来ても…罪が軽くなるように…」
沖田はそれだけ告げると、山南にすみません行きましょうと言い、屯所の中へと消えて行った。
「土方さんも……知っちゃったのか」
遼はポツリと呟けば、キッと屯所を睨みつけるようにして見た。
「それなら話が早い……有り難う、沖田さん…」
それだけ言い残すと、遼は意を決して屯所の門をくぐった。
たとえどんな罰が待ち受けようと、たとえ皆からなんと言われようと…
俺は今度こそもう逃げない
新撰組
一番隊 坂本遼として…
この時代に生きる
俺なんかが歴史を変えるなんてこと、できないかもしれないけど…
それでも…
託された使命があるなら
その使命を果たすまで
俺は……
一番隊 坂本遼として生きる!!
大切な人の
最期の時まで……
生きるんだ…!!!!!
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