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遼は気が付いたら必死に、龍馬を追っていた。
「…っっ坂本龍馬さん!!っはぁはぁ」
沖田の言う様にいつも逃げてばかりの龍馬は、馬のように脚が速い。
細い路地や裏道をなんなく颯爽と駆け抜ける。
龍馬は遼の叫びを聞けばチラリと後ろを振り返り、薄暗い路地で走る足を止めた。
「さっきの少年やぁないか…」
遼も足を止めれば、はぁはぁと肩で息をする。
「ワシを追ってくるとは…おんしゃあ何もんじゃ?…」
「坂本…遼です」
その名を聞いた途端、こりゃぁたまげた!と龍馬は笑い転げた。
そしてすぐに真面目な顔になり、また問い掛けた。
「おんしゃあ…何もんじゃと聞いちゅうがじゃ」
遼は龍馬のギラギラと光る瞳から目が離せなかった。
「俺は…147年後の未来から来ました。……きっと、龍馬さん…あなたに呼ばれて…」
龍馬は目を見開いて、遼を見た。
「おんしゃあ…何を言いゆう?…ワシ以上のべこんかわじゃあ!!」
「べこ…べこんか?」
「ははは!大馬鹿者っちゅう意味じゃ!」
大馬鹿者か…そう言われても仕方がない。
と遼は苦笑を漏らす。
「まぁええ。ワシはおまんが気に入ったぜよ!…その、俺に呼ばれたっちゅう話を詳しく聞かせて貰えんかの?」
龍馬は遼の言うことを全く信じていないかのような口調で言った。
「…今は寺田屋に泊まってるんですか?」
「おんしゃあ何でもお見通しっちゅうやつか?」
「沖田さんから…以前聞いたんです」
龍馬は瞬間、怪訝な目付きになった。
「…おまん、新撰組か」
遼は、しまった…と思ったが後には退けない。
「そうです。でも…俺は龍馬さんに刀を向けたりしません」
というか今日は刀すら持ってませんし、と笑ってみせる。
「……まぁええ。おまんを寺田屋へ案内しちゃるき。…そこで話を聞かせぇや」
龍馬は不信感は拭えないものの、遼が嘘をついているようにも思えず、自分についてくるように促した。
遼は内心今にも心臓が破裂しそうだった。
そして何故だか頭痛も酷い。
だが今まさに、夢で見た…夢の主人公が目の前にいるのだ。
沖田曰く、遼は坂本龍馬の生まれ変わり。
幕末に飛ばされて約3ヶ月。
やっとこの二人は、巡り会ったのだ。
出逢うべくして出逢ったとは…まさにこのことだ。
遼は不安と期待で胸の高揚が止まらなかった。
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