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誇れる国…
自信を持ってそんなことは言えないのが現代の近況である。
差別も無いわけではない。
しかし身分などはこの時代に比べたら無いに等しいだろう。
龍馬は依然としてキラキラした目で、遼を見ている。
期待を裏切ってはいけない気がした遼は、少しの嘘をつく。
「今、日本は豊かで身分なんてもんはありません。それに…もう刀なんて持ち歩きません。切腹することも斬首になることもありません。…ただ、……」
ただ…今の日本も、腐ってる。
汚い世の中、一日本人の誇りなど何もない。
この時代の人の様に精一杯生きている人なんて数える程だ。
これも現代の日本の豊かさがあるからこそなのだろうが…
「…そうか…刀も…身分もないがか……すぐ命を捨てることも無くなったがか……そうか…そうか…」
遼が気付けば、龍馬は鼻水を垂らしながら泣いていた。
良かった…良かった…と。
遼は胸がズキンと傷んだ。
「遼…おんしゃ、今幸せがか?」
「え…?」
どういう意図があっての質問なのだろうか。
「未来では幸せがか?」
「…色々あったけど…幸せですよ」
「…なら、ええがじゃ…」
そう言って龍馬は泣き笑いをした。
この人は、未来の人の幸せまで考えて…今を生きているというのだろうか。
でかい。
見据える先が…でかすぎる。
こんな大きな人間の生まれ変わりが…本当に俺というのだろうか…
「龍馬さん…俺にも何かできますか…」
遼は自分の小ささに不甲斐なさを感じ、涙しながら問うた。
「何か…できますか…」
龍馬は涙を拭い、遼の肩を組みながら大きな声で言った。
「…できる!!!できるぜよ遼!!!心に願うだけじゃあ駄目じゃ!誰を守りたいか、何を守りたいか…それがわかればおまんにも、できるぜよ!!」
大きいことをしちゃろうぜぇ遼!!
そう叫ぶ龍馬は輝きを放ち、偉才を放っている。
確かに敵すらも魅了してしまうだけの力がある。
「…新撰組を……新撰組を…救いたい…」
「……ほうか。おまんならできる!救っちゃれ…あの勿体無い人らぁの命を。……あそこは良い人らぁの集まりじゃ。じゃが命を無駄にしすぎるんがぁ駄目じゃ」
それを遼が救っちゃれ…と真っ直ぐな眼差しで告げる龍馬は、今まで出逢った誰よりも…大きく見えた。
遼はしっかりと頷き、龍馬に誓った。
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