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それから色々な話をした。
ほとんどが龍馬が遼に質問ばかりしていたのだが。
二人は確実に打ち解け合って行く。
話せば話す程、お互いがお互いに惹かれて行く。
まるで生き別れた双子に出逢ったかの様に。
自然と惹かれ合う。
「おんしゃぁまっこと不思議な奴じゃ…」
「龍馬さんこそ!」
「こんな人に俺は出逢ったことがないがぜよ」
「俺も同じ気持ちですよ」
「…おまんはエゲレス語も沢山知っちゅう。異国の文化も沢山知っちゅう…聞けば聞く程、ほんに未来から来たんじゃぁ…と納得させられゆぅ」
龍馬は嬉しそうに笑う。
遼は未だに不思議な感覚に囚われる。
147年前の自分の魂を持った人間と、今こうして実際に会って会話をしている。
嬉しいような懐かしいような…。
しかし結末を知る魂は、嘆きの悲鳴をあげる。
魂が共鳴すればする程に、切なさの悲鳴をあげる。
この魂が報われることはあるのだろうか。
今の二人には、まだわからないことである。
「あ…そろそろ屯所に帰らないと」
「お~もうそんな時間かえ?!…道は覚えちゅうか?」
「龍馬さんの記憶が、覚えてますって」
遼がそう言えば二人は顔を見合わせて笑い合った。
「おまんとは…死んでも魂で繋がっちゅうんじゃな」
「…次会う時まで、…元気でいてください」
龍馬は静かに頷いた。
「また会う約束のシェークハンドじゃ遼!」
そう言って右手を差し出して来た龍馬に応え、遼も右手を差し出し龍馬の手を力強く握った。
「…約束ですよ!」
握手をした瞬間、龍馬の脳裏に遼の記憶が見えた。
その時、龍馬の瞳から一筋の涙が伝った。
「これが…これがおんしゃぁの時代の町か…」
「え…?」
遼はわけがわからず問い返す。
「今…ワシはおまんの記憶を見ゆうがじゃ……自然も少ないしまっことでかい家ばっかぜよ…でも、皆幸せそうに笑っちゅう……」
遼は現代のことが懐かしくなり、目頭が熱くなる。
「龍馬さんを…俺の時代に連れて行けたら良いのにな」
「いっぺんくらいはぁ…行ってみたいち思うが、ワシのかわりにおまんが見てくれゆう。そんで今おまんの記憶をワシが見ゆう。これで十分じゃぁ」
そう微笑む龍馬は、心から嬉しそうで遼に何度もありがとう、ありがとうと言っていた。
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