坂本龍馬と坂本遼!!!

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遼は寺田屋を出てから、全速力で走った。 足が縺れそうになるくらい、走った。 龍馬さんが…… 龍馬さんが…!!!!! 最後に握手をした際に、遼も龍馬の未来を見たのだ。 いや…見てしまったのだ。 まだ夢では見ていなかった龍馬の生涯。 最期の時を。 慎太と呼ばれる男と共に居た。 一瞬の出来事だった。 刀が龍馬の額を抉った。 龍馬さんが… 龍馬さんが殺される……!! 暗殺された事は遼も知っていた。 しかし、その場面を脳裏で見てしまっては話が別だ。 わかってはいたはずなのに、涙が止まらない。 その記憶を打ち消すかのように、走った。 息が止まるのではないかというくらいに、走った。 「…ッッ守りたい……新撰組も…ッッ…龍馬さんも……っ!」 その叫びは、茜色に染められた京の都に虚しく響いた。 無我夢中で走り、屯所へ着く頃には涙も枯れ果てていた。 悲しみは怒りに…怒りは誓いに…遼はまた一つ、守りたいものが増えたのだ。 屯所へ戻れば、庭先で沖田が遼の帰りを待っていた。 「…おかえりなさい」 「あ……沖田さん」 「随分と身嗜みが乱れていますけど…無事に会えましたか?」 「…うん。会って、今まで喋ってたよ」 その割りには元気がない遼の姿を見て、沖田は疑問に思ったがそれは敢えて訊かない。 「…不思議な人だったでしょう?」 「ははっ…凄い人だったよ」 「良かったですね。…会うことができて」 沖田は少し切ない顔をした。 「本当に…良かったよ。色々とはっきりしたし」 「…そうですか」 沖田はある一つの不安を拭えないでいた。 遼が龍馬に会ってしまったら、この時代に居る意味がなくなってしまい、未来に帰ってしまうんじゃないかという不安だ。 その不安から、念願の龍馬に会えたということも心から祝福できないでいた。 「…ずっと外にいたの?」 「……見廻りから戻って暇だったので」 長時間待っていたのが、体の震えや唇の色でわかった。 「ったく…風邪引いたらどうすんの!」 「ひ、引きませんよ!」 「看病しないからな~」 「…薄情もん!」 良かった… 遼さんが戻ってきて… 不安の中にも少しの安堵があった。
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