星に願うは君に幸あれ…

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次の日、遼はいつもより早く目が覚めた。 冬の朝。 辺りはまだ薄暗い。 時間にして5時頃だろうか。 遼は他の隊士を起こさぬように、素振りをする為自分の木刀を持って庭へ出た。 ――ビュン ――ビュン 庭へ行くと、先約がいた。 あれは…… 「土方さん?」 土方は素振りをする手を止め、遼の方に向き直った。 「なんだぁ?…随分早起きじゃねえか」 足先がピリピリと痛むくらいのこんなに冷える朝なのに、土方は汗をびっしょりとかいていて、それを肩にかけてある手拭いで拭きながら言った。 「土方さんこそ!…毎朝こんなに早い時間に素振りしてるんすか?」 「まぁな。昼間はやらなきゃならねえことが山程あるからな」 遼は土方を少し見直した。 と言っても別に愚弄していたわけではないのだが。 土方は滅多に稽古に参加しない為、不思議に思っていた。 参加しないのではなく、上に出す報告書やら何やらをまとめるのに忙しくて参加できなかったのだ。 「意外に働き者なんすね」 「意外とはなんだぁ。失礼な奴だなお前も」 土方はククッと喉を鳴らして笑えば、お前は遠慮ってやつを知らねぇな。と言った。 「他の奴らは俺のことが怖いのか滅多に喋りかけてこねぇーよ?臆病者ばっかで困る」 そう告げる土方は少し切なそうな顔をする。 確かに土方は鬼の副長と言われる程に、皆に対して厳しかった。 しかし厳しいばかりでもない。 頑張れば頑張った分だけ褒めてくれる。 認めてくれる。 たまに皆に酒も振る舞ってくれる。 土方は自分にも厳しく他人にも厳しい。 ただちょっと偉そうな素振りに癖があり、副長の土方に対する感情は皆好きと苦手と綺麗に別れていた。 厳し過ぎるが故に、己の首まで絞めてしまう。 近藤にかわって裏で指揮をとるという微妙な位置で、土方は葛藤に苦しんでいたことだろう。 しかしその苦しみも旧友、近藤の為なら然程苦にならなかったのでは、と思いたい。 ただ近藤を大名にしたい!その誠の下、土方は動乱の世を駆けていたのだ。 だがその誠は、一人の男が背負うにはあまりにも重すぎた。 「土方さんは何の為に、命を懸けてるんすか?」 遼はふと問い掛けた。
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