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「つ、か、れ、たぁぁあああ!!!!!」
そう叫びながら原田が、土方と山南の座る縁側に乱入してきた。
「はははっお疲れ様、原田くん」
和やかな表情で山南は言う。
土方はというと慌てて着物の袖で頬を拭いていた。
「いやぁほんと疲れたっすわ~!サンナンさんと土方さんは呑気なもんっすねぇ」
原田は山南の隣に腰かけながらへとへとの顔で言った。
「こういうのは若者に頑張って貰わないとね。ね?土方くん」
「ぁ?…ああそうだな」
急に話を振られついぶっきらぼうに答えてしまう。
「なになに~?土方さん機嫌悪いんすか~?すっげぇ不機嫌な顔して」
「ははは!土方くんはいつもこんな顔じゃないか」
「おっなかなか言うねぇサンナンさんも」
原田はケラケラと笑っている。
「俺はてめぇらみてえにヘラヘラ笑ってられねぇんだよ!」
更に不機嫌な顔になる土方を見れば原田は意地悪な顔をして告げる。
「でもさぁ土方さん、遼が来てから楽しそうだな」
「土方くんは可愛い子が好きながらね」
山南は冗談混じりに笑う。
その二人のやりとりに土方は声を張り上げて言った。
「馬鹿ばっか言ってねぇで終わったんならさっさと片付けしろ左之!!」
原田は、ちぇっと呟けば
「土方さんも手伝えよー」
とぶつぶつ言いながら皆がいる庭へと戻って行った。
「…まるで原田くんは風雲児だね」
「あれで学に長けてるっていうんだから世も末だな」
「ははは!…総司が憎まれ口ばかり叩くのは、土方くんに似たんだろうね」
山南は腹を抱えて笑っていた。
「なっ…どういう意味だよ!…ったく。サンナンさんも段々性悪になってくな」
そんなことを言う土方だが、表情はどこか嬉しそうだった。
久々に山南と、こうして腹を割って話せたことが嬉しかったのだ。
山南も同じ気持ちだろう。
芹沢暗殺の直後から、あまりこうして笑い合うことが少なくなっていた。
山南は芹沢暗殺の参加に断固として拒否していたからだ。
しかし土方が山南に半ば強引に参加させたのだ。
現実を見ろ、と。
その様なことがあったため、お互いに多少引け目を感じていたのだ。
しかし今日で、ずっと胸に架かっていた暗雲が少し晴れたような気がした。
だが山南の闇はもっと奥深くに潜んでいることに、土方も山南自身でさえもまだ気付いていないのだった。
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