星に願うは君に幸あれ…

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無事に年も越し… 時は1864年1月2日。 新撰組は年明け早々、重大な任務を課せられた。 将軍徳川家茂公、上洛につき下坂。その為の警護だった。 隊士のほとんどがその任務に屯所をあけたが、遼は留守組の一人であった。 留守中に屯所を守るのもお前らの任務だ、と大仕事を請け負い上機嫌の土方から意気揚々に言われ、遼はその任務を遂行すべく毎日稽古に明け暮れていた。 いつ敵が襲撃してきても良いように、との心構えは感心である。 が、遼の腕前はまだまだだ。 ましてや真剣など握ったことすらない。 無論遼は人を斬るつもりなど一切ないのだが。 それは、今もこの先も変わらない気持ちだった。 それにしても暇である。 いつもは騒がしい屯所も、これだけガランとすればさすがに寂しい気分になる。 そう思っていた時、天井から何やらゴトゴトと音がした。 遼は鼠か何かか、と思ったがそれにしてはあまりにも大きい音だったので不審に思った。 「まさか……刺客!?」 そう発想する遼は、もう立派な幕末の住人だ。 その瞬間真後ろから声がした。 「誰が刺客やねん」 遼はバッと後ろを振り返り、その姿を見れば驚愕した。 「に…忍者…だ」 「忍者?忍のことか?…それにしても間抜けな面やなぁ」 初めての割には馴れ馴れしい忍者の様な男にムッとする遼。 「ていうか、あんた誰だよ!」 遼は強気で言うが、木刀も真剣も持っていない丸腰だ。 もし彼が敵であるなら、それは相手から見れば本当に間抜けな様子である。 後先考えずに物を言うのが遼の悪いところだ。 だが、どうやら彼は敵ではないらしい。 彼はようやく名を告げた。 「誰って…まぁええわ。俺は新撰組の監察方、山崎丞や。よろしゅうな、坂本くん」 か、監察方? 遼は初めて聞く役職に頭にハテナが浮かぶ。 「まぁ簡単に言うたら、情報収集係みたいなもんやな」 山崎は遼の心を読むかのように、監察方について説明した。 「そ、そんなのがあるんすね。新撰組も…」 現代でいう潜入捜査官みたいなもんだろうか…と遼は考えた。 「そういや…今まで何処に潜んでたんですか?!一回も会ったことないし…」 「え?ずっとおったで?喋るんは初めてやけど」 「…え?」 「…ん?」 「えーっ嘘だー!!!」 「……さっきから失礼なやっちゃなぁ」 山崎は溜め息を吐いた。
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