星に願うは君に幸あれ…

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遼は現代の夢を見ていた。 楽しそうに笑う彼女。 ふざけ合う友達。 そして一人の夜。 ―――早く… ―早く… 俺を呼ぶ声が聞こえる。 遠くから、近くから… 早く、と呼んでいる。 俺を呼ぶのは……誰? "ありがとう…新撰組に来てくれて…" なに…? 新撰組……? なんだか…心地良い声だな… ………新撰組!??? 遼はガバッと勢いよく起きた。 「そうだ…ここは…屯所だ……」 現代の夢を見ていた為、記憶がごちゃごちゃになっていた。 いくら現実から目を背けても、幕末ということ新撰組ということに変わりはない。 「…寒く、なかったか?」 遼は隣にいた存在に気付かず、ビクッとし隣に目をやった。 「さ、斎藤さん…」 「嫌な夢でも…見たのか?」 「いえ……幸せな夢でした」 そう答えれば遼は夢を思い出していた。 あぁ、ツカサは元気だろうか。 友達は元気だろうか。 懐かしさに胸が詰まる。 「…坂本さんは、意外と泣き虫だな」 「…へ?!」 「いや…目が随分と腫れているからね」 「あ……」 どうりで瞼が重たいはずだ。 あれだけ泣けばそりゃ目も腫れるよな… こっちに来てから確かに泣き虫だ。 遼は自嘲気味に笑う。 「確かに泣き虫ですよね俺」 遼のその姿を見て斎藤は眉をしかめ目を細めた。 「すまない…泣き虫は悪いことではないよ。泣いて気が晴れるなら…それも必要なことだ」 斎藤はいつでも優しい。 出逢った時から今まで、ずっと優しい。 欲しい言葉を欲しい時にくれる。 「相変わらず優しいなぁ斎藤さんは」 「坂本さんが、好きだからね」 「え!?あー…それは…」 遼はそういう意味じゃないとわかっていても、何故だか慌てふためいてしまう。 「ははは!そっちの気はないから安心してくれ。仲間として、という意味だよ」 「わ、わかってますよ!」 遼は己の顔が朱に染まるのがわかり、余計に恥ずかしくなってしまった。 「坂本さん、これから先何があっても…新撰組でいてくれるかい?」 「え…?」 「…仲間でいてくれると、約束してくれないか?」 斎藤はいつもの穏やかな目で告げる。 たとえどのようなことがあっても心は繋がっていると… 仲間でいると 約束してくれないか? 遼は戸惑いの目で見つめることしかできなかった。
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